肝臓癌と胎児は似たもの同士
JUGEMテーマ:がん全般

どんな人にも隠れた素顔があるように、がん細胞にも思いがけない一面が隠されています。よく調べてみると、がん細胞は生まれる前の胎児の幼な顔によく似ていると言います。


肝臓癌患者の血液中には、アルファ・フェトプロティン(AFP)という特殊な蛋白が現れます。そのために血液検査をしただけで肝臓癌と診断することができます。それは肝臓癌の細胞が、このAFPという蛋白を作って血液中に放出したからです。ところがそのAFPという蛋白は、不思議なことに胎児の血液の中にもあるといいます。生まれる前の胎児もこの蛋白を作っていたのです。


子宮の中の胎児は羊水の中で生活をしています。羊水を飲んで羊水のおしっこもするといいます。その意味では、胎児は一種の水中生物と言えるかもしれません。生まれてオギャーと泣いて呼吸をすることで水中生物から空中生物に変わりますが、それと同時に、このAFPという蛋白は作られなくなります。そして赤ちゃんの血液の中からは消えてしまいます。ところが、その赤ちゃんが成長して大人になり、その人が運悪く肝臓癌になると、再びこのAFPという蛋白が血液中に現われるといいます。なんとも不思議な現象です。


ところで、一人の人間の体は六〇兆個もの多数の細胞で出来ているといいます。こんなに多数の細胞であっても、これらの細胞は元をたどれば、たった一対の精子と卵子の合体した受精卵から始まります。一個の受精卵が分裂に分裂を重ねて増殖し、最後には六〇兆個もの細胞集団になったのです。


体を作る設計図が遺伝子ですが、受精卵の遺伝子も、細胞分裂に伴って次々にコピーされて新しく生まれた細胞に受け継がれます。そしてその遺伝子は、六〇兆個の細胞の一つ一つに、正確に等しく入っています。このように一つの細胞から始まって増えた細胞集団をクローン細胞といいますが、人間も受精卵のクローン細胞の集団であったのです。


ところで、体内のすべての蛋白は遺伝子の命令で作られます。AFPも蛋白ですから遺伝子の命令で作られます。ところが、胎児の間だけAFPを作っていたその遺伝子は、生まれると同時にその作業を停止します。そしてその後は、その遺伝子は働くことなく細胞の核の中で、ジッと静かにしています。眠っているのです。


ところが、時が過ぎてその人が大人になり、その人の肝臓の細胞の一部が突然変異で肝臓癌に変身すると、その肝臓癌の細胞の中にあったAFPを作る遺伝子は、再び作業を開始するといいます。そしてAFPの再生産を始め、血液中に放出するというのです。


がんといえども、それは自分の体内で発生するのですから、元をたどれば受精卵という最初の生命体の子孫です。人々に憎まれている鬼っ子のがん細胞ではあっても、その中の遺伝子はすべて親から平等にもらったものです。


ところがあるとき、突然変異で正常の肝細胞が癌細胞に変身すると、そこでは、今まで眠っていた、無限に増殖することを専門とする癌遺伝子が働き出すと同時に、AFPをつくる遺伝子も同時に目を覚まし活動を開始します。ところがそれらと同じ遺伝子は、まだ癌になっていない正常な肝細胞の中にも存在していて、そこではそれらの遺伝子はまだ眠ったままだというのです。


正常細胞の中では、これらの遺伝子はまだ作動禁止の止め金がかけられたままで作動することはありません。それらは癌になったときだけ働く遺伝子であったのです。しかもその遺伝子は、胎児時代に一定の使命を持ち活発に活動をしていたといいます。AFPという蛋白は、このように癌になって再び働きだした遺伝子が作りだした蛋白であったのです。


このように、癌と胎児だけが共通に持っている蛋白を癌胎児共通蛋白といいます。そして癌胎児共通蛋白は、AFP以外にも何種類もあって、現在では沢山見つかっています。癌と胎児はこのように共通の蛋白を持ち、両者はいろいろな点で類似していたのです。まさに肝臓癌と胎児は似たもの同士であったのです。


その最大の類似性は、なんといっても細胞の旺盛な増殖でしょう。癌細胞も胎児細胞も猛烈な勢いで増殖します。どちらかというと胎児細胞の増殖速度は癌以上で、胎児はわずか一〇ヵ月の間で三キログラム近くまでに成長します。


ただ胎児が癌と異なる点は、胎児は時期が来ると母親の子宮から自然に出て来ることです。これが出産であり赤ちゃんの誕生です。その本質は拒絶反応と考えられています。母体は胎児を異物と認識して、免疫反応で胎児を拒絶していたのです。


しかし癌は、大きく育っても拒絶されることはありません。残念ながらいつまでも体内に居座ります。癌も一人前になると拒絶されて、体の外に放出されるようであれば誠にありがたいのですが、そううまくはいきません。しかし、そのような研究は実際に行なわれています。癌を異物化して、免疫の作用を使って拒絶反応で追い出そうとする試みです。現在のところまだ成功はしていませんが、可能性は十分にあります。


胎児が水中生物であることはすでに述べましたが、癌はその水中生物としての胎児と共通点があって、大変よく似ていました。ところが癌は、もっともっと太古の昔の、海の中の祖先である単細胞時代の水中生物にもっとよく似ていたのです。

| がんは細胞の先祖返り | 04:57 | comments(1) | - | pookmark |
世界は一つ、生きものは全て兄弟
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今から三十数億年前、地球で最初の生命体は海で生まれました。それは原始的な単細胞生物でコアセルベートと呼ばれていました。その単細胞生物は、海の中で何億年もの長いあいだ黙々と生き続け、原始単細胞生物として生命を維持していたのです。そこでは、生物は常に倍々に増殖し続けることが運命付けられ、原始単細胞生物は海水中で無限の増殖を続けていたのです。その姿は、がん細胞が常に倍々に増殖する姿と同じで、がんも無限の増殖を続けていたのです。増殖することをやめた古代の生物は、その時点で遺伝子の糸はプツンと切れて、永遠にこの世から消えてしまうのでした。


進化は続き、長い単細胞時代の末に多細胞生物が現われました。遺伝子は次々に枝別れして新しい種が生まれ、海の中には多くの種類の生物が発生しました。更に地上の条件も整い、植物に続いて動物も一斉に上陸を開始し、地球上には多種多様な生物が現われたのです。そして遺伝子も、決して途絶えることはなく、太古の昔から綿々と、生物の細胞の中に受け継がれて現在に至っていたのです。途中から発生した生物などはありません。


話は変わりますが、大腸菌は嫌気性桿菌といって、この地球上に酸素が発生する以前から生存していた単細胞生物です。そして現在は、地球上のどこにでもいる最も一般的な細菌ですが、その大腸菌の核の中にも遺伝子は入っています。そしてその遺伝情報量は、文字に換算すると新聞紙一枚の文字数に匹敵するといわれています。


ところが多細胞であるわれわれ人類も、極く小さな一個の細胞の核の中に遺伝子は入っているのですが、その遺伝情報は大腸菌などよりはるかに多く、優に、一つの図書館の全書籍の文字数に匹敵すると言われています。人類の遺伝情報量がいかに膨大であるか、簡単には想像もつかないほどです。


その遺伝子の本体はDNAという化学物質です。そのDNAに書き込まれてある遺伝情報は、四つの塩基で出来ているのですが、それも化学物質で、それは蛋白のもとになるアミノ酸の配列を指定する暗号コードのようなものです。その暗号コードを解読することによってアミノ酸の配列がきめられ、生物は蛋白を合成することが出来ます。


そうしますと、蛋白で出来ている生物の体は、内部の物質を含めて、すべてその遺伝子が働くことで作られます。遺伝子の上に配列されている四種類の文字によって全ての遺伝情報は書かれていて、その文字を解読することで、蛋白は合成されていたのです。


生物体の基本は蛋白です。その蛋白はアミノ酸で出来ているのですが、アミノ酸は全部で二十種類あります。そうしますと、生物が持っている全ての蛋白は、二十種類のアミノ酸で出来ていることになります。


そのアミノ酸の配列を決定するものが遺伝子です。その遺伝子には四つの文字があって、その内の三つを使って一つのアミノ酸を指定します。そして、その四つの文字をいろいろと組替えることによって、二十種類のアミノ酸を全部指定することが出来ます。このように遺伝子とは、アミノ酸の配列を決定する暗号コードであったのです。


しかも、その遺伝子の文字は、地球上の全ての生物に共通であって、生物はどの生物の暗号コードの文字をも解読することが出来ます。そして生物は、その暗号コードを使って、あらゆる生物の蛋白を作り出すことも可能なのです。それは次のようなことで証明されています。


糖尿病はインシュリンの異状によって発症します。そしてその治療法として、以前は、牛や豚の膵臓から取り出した動物のインシュリンを使っていましたが、それらは人のインシュリンと少し構造が異なるために、アレルギー反応が発生してしまって長く使うことができません。そこで、どうしても人のインシュリンが必要であったのです。


そこで行われた方法は大腸菌に人のインシュリンを作らせることであったのです。インシュリンは蛋白ですから遺伝子の指令で作られます。そこで、インシュリンを合成する人の遺伝子を切り出し、それを大腸菌の遺伝子につなぎ合わせ、大腸菌に人のインシュリンを作らせたのです。そして大腸菌を増殖させることで、人のインシュリンを大量に作ることに成功したのでした。大腸菌であってもその遺伝子は人の遺伝子と共通であったのです。


そうしますと、地球上に存在する二〇〇万種の生物は、全てDNAという共通な遺伝情報を有する同じ種類の生物であるということが出来ます。すなわち、生物は多種多様ではありますが全て兄弟であり、全生物は、一つの生物から枝分かれして発生してきた一つの大きな家族であったのです。

| がんは細胞の先祖返り | 05:01 | comments(0) | - | pookmark |
発がんとはがん遺伝子が作動した結果
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人間の遺伝子のうち解明されている遺伝子は今のところまだわずかですが、これらの遺伝子は、四つの文字で表現される約三十億もの情報から出来ています。ところが、これらの遺伝子のうち実際に稼働しているのは、全体のわずか数パーセントで、多く見積もっても高高一〇パーセント程度であって、それを超えることはないといわれています。


このように、遺伝子の中には現在、作動していないものが数多くあるどころか、むしろ作動してない遺伝子の方が多いのですが、それは体にとって都合の悪い遺伝子は作動しないようにしてあって、眠らせてあるのかもしれません。いずれにしても、細胞の中には、その作用が全く判らずに何をしているのかわからない遺伝子がたくさんあります。それでも健康な生活を維持するためには、遺伝子が調和を保ってバランスよく働くことが必要であったのです。


当然、これらの遺伝子の中には、むかし活躍していた無限の細胞増殖を起こす遺伝子も入っています。それががん遺伝子です。最近の研究によると、このようながん遺伝子は何十種類も見つかっていて、普段は正常細胞の核の中にあって稼働することなくじっと静かにして眠っているといいます。


これらの無限の細胞増殖を起こす遺伝子は太古の昔、単細胞時代には重要な使命を持って働いていましたが、単細胞から多細胞になる進化の過程で、これらの遺伝子にいろいろなブレーキがかけられ、働くことを禁止されていたのです。


がんが出来る原因にはいろいろありますが、最近の科学では、発がんとはがん遺伝子が作動した結果であると統一的に解釈されています。しかもこれらのがん遺伝子はどの正常細胞の中にも入っていて、普段は静かに眠っていて起動することはないといいます。


これらの遺伝子の眠りを覚まし起動させる原因物質が発がん剤です。発がん剤にはいろいろな種類がありますが、いずれの発がん剤も、がん遺伝子を刺激して起動させる物質であったのです。


この事実を実証した人が平成七年度の文化勲章受賞に輝いた花房秀三郎教授です。教授は京都大学ウィルス研究所のご出身で、米国ロックフェラー大学の教授として研究を重ねられ、現代の腫瘍学の基礎を築いた方です。

| がんは細胞の先祖返り | 05:05 | comments(0) | - | pookmark |
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免疫治療専門医 中嶋靖児
中嶋靖児 著

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