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自分の命は自分持ち
JUGEMテーマ:がん全般

私はときどき患者を冷たく突き放すことがあります。たとえば、あまり必要がないのにどうしても注射してくれと言ってきかない患者には「痛いのはあなた持ちですよ」と言いながらブスリと針を刺します。刺す私は決して痛くはありません。


また、がんの患者ではないのですが、ある有名な暴力団の幹部が来院してリンパ球治療をうけたときのことです。その人物はよほど偉い幹部と見えて、強そうな二人のボディーガードまでついて来ていました。本人は太っていてヒゲを蓄え、いかにも頑丈そうに見えますが、進行した糖尿病があって検査結果はメチャクチャです。おまけに腎臓もやられ、そのうえ強度の肝障害もあります。


本人の話では、自分の配下のバーやキャバレーを毎日回り、一日一本以上のウィスキーボトルを空にすると言います。しかも勢力維持のため、これはどうしてもやめるわけにはいかないというのです。


私はその患者に向かってこうたずねました。「あなたは人を刺したことがありますか」と。内心ビクビクしながら質問したのです。本人は黙ってただニヤッと笑うだけです。「それで刑務所に入れられたの」と思いきって再びたずねたところ、その返事は、予想どおり「子分がね」でした。やっぱりと思いながら、次のように病気の説明をしたのです。「毎日ボトル一本飲むことのツケは、今度は子分が払ってはくれないよ。自分の命で払うことになる、高くつくぞ」と。


大量のお酒を飲みながら糖尿病の治療をしても、それは無意味というものです。どんなによい治療を受けても良くなることはありません。良くなるためには、どうしても本人の自覚が不可欠です。自分で努力しない人には、「命は自分持ちだよ」と私はなぜか冷たく突き放してしまうのでした。


実は、リンパ球を注射すると精がつくという噂があります。それは実際に、リンパ球治療を受けている多くの患者の実感らしいのですが、患者の間に広まっている噂です。この暴力団の幹部は、「精力維持?」のためにリンパ球の注射に来ていたのでした。

| 医者が「治す気」になるとき | 05:35 | comments(0) | - | pookmark |
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免疫治療専門医 中嶋靖児
中嶋靖児 著

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