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たとえ医者に見放されても希望はある
JUGEMテーマ:がん全般

がんが進み過ぎて、一般に言う医者に見放された状態となって、患者も家族も途方に暮れている人がいます。そのように落ち込んだ状態で来院しても、そのとき自分で歩き、食べることができる限り、その人のがんの治療法は必ずあるはずです。


がん治療の歴史は古く、今までにも先人たちによって、いろいろな治療が行なわれてきました。そこには数限りない創意と工夫がなされてきたのです。たとえ、もう現代医療で何もすることがないと言われたとしても、それでも尚、いろいろな治療方法がまだ残されています。それは治療効果の範囲をわずかだけ広くして考えればいいからです。


要は、がん病巣を消滅させてしまおうとすることよりも、その人がいかに長く生きることが出来るかが大切なのであって、そのための工夫をすることが肝心なのです。最近では、その考え方に立ってがんとの共存、またはがんとの共生を考えに入れた治療法が研究され、新しい治療法として、積極的に取り入れられるようになってきました。


そうであるにもかかわらず、それらの患者に、ことさらに進行がんの治療が困難であることを強調したり、事実だからといって、本人に丁寧に説明もせずに、また納得や了解も得ないままで「これ以上の治療法はないからホスピスに入りなさい」などと、患者に一方的に宣告することは、欧米とは異なる生活習慣や精神文化を持つ日本では、患者の心をいたずらに絶望の淵に追いやり、かえって心の平安を乱し、死期までも早めてしまいます。


キリスト教で言われる復活や仏教の教える再生を信じ、こころ静かに死を受容することなど、私たち凡人のできることではありません。末期がんといわれる状態となり、だめだと言われたとしても、生きることの望みは誰も捨てるはずはないのです。いや、むしろ生きる望みをいつまでも持ち続けることによって、心の平安を引き続き保つことができるのではないでしょうか。大切なことは、あくまでも心安らかなままで自分のがんを受け入れ、そのがんと向き合うことなのです。


最近はホスピスの代わりに緩和ケアという言葉が使われていますが、これは決して終末期医療だけを意味するものではありません。そこには、がん患者の痛みなどの苦痛を緩和しながら医療を行うという意味も含まれていて、積極的に痛みをとってがんの治療を行うという意味合いも含まれていたのです。


いずれにしても、どのような状態であっても、生きようとする本人の心を否定するような言動は厳に慎まなければなりません。その上で、現実に発生している痛みなどの肉体的な苦痛から解放することが大切であって、痛みがあっては、どんな治療の効果も期待出来ません。痛みの苦痛で食事もできませんし、免疫の力も回復することは出来ないのです。


痛みに対しては、鎮痛剤のモルヒネなどを積極的に使ってでも痛みを止めなければなりません。これらの薬を使うことで全身状態は改善し、心も休まり、がんへの抵抗力も増加します。私はむしろ、これらの鎮痛剤を積極的に使うことを勧めています。痛みを我慢する必要は全くないのです。


苦痛の無くなったところでいろいろと工夫をし、わずかであっても、長生きのための余地のあることを知った患者は、そのことだけでも顔色が明るくなり、元気も出てきて生き生きとなります。それは、そのとき元気になった分だけでも心は解放され、それだけ病状改善の可能性が増加します。それがわずかであったとしても、明るい見通しをつけて治療を開始することが大切であったのです。


進行したがんを持っているにもかかわらず、五年、一〇年と長い間、闘病しながら普通の人と変わらない生活をしている人がいます。このような人は、何事にも積極的で、自分の病気は自分で治すという強い意気込を持っている人が多いようです。


進行がんの治療では、今まで述べてきたように、医師の行なう治療以上に患者自身が自分で行なう治療が重要な意味を持っていたのです。その意味では「がんは自分で治す」と言っても決して過言ではありません。


そうなることで病気に対する抵抗性、すなわち、がんの免疫がますます亢進します。そして、このような状態にすることががん治療では重要な意味を持ちます。こうした経験を背景に、がんの免疫治療がにわかに注目され、いろいろな試みが行なわれるようになってきたのです。

| 医者が「治す気」になるとき | 14:16 | comments(0) | - | pookmark |
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免疫治療専門医 中嶋靖児
中嶋靖児 著

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