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胸腺で教育されるT細胞
 JUGEMテーマ:がん全般

それでは免疫系の中で「非自己」と区別して、このように「自己」を主張する場所はどこなのでしょうか。それは魚類の「エラ」から進化した「胸腺」であるといいます。人では、その胸腺は胸骨の内側にあって子供のほどの大きさです。その中にはT細胞がぎっしり詰まっていて、そこでT細胞への自己確立のための教育が行なわれていたのです。


その胸腺は生まれて間もない胎生期の初期に出現し、思春期には三〇グラムから四〇グラムまでに成長して最大となります。しかしその後は次第に縮小し、その働きも弱くなるといわれています。


T細胞が胸腺由来のリンパ球であることは前に述べましたが、そのリンパ球も初めは骨髄で作られます。それは骨髄にある造血幹細胞から分化して生まれた細胞で、その未分化なTリンパ球前駆細胞が血流に乗って胸腺に来ると、そこで初めて、「自己」を主張するためのリンパ球遺伝子の再構成が行なわれます。リンパ球の教育はここで行なわれていたのです。


具体的には、そこでT細胞表面には、一つの抗原と特別に反応する抗原受容体が出来るのですが、その際に、自分自身の抗原とは決して反応しないように教え込まれます。すなわち、自分自身を攻撃することのないように教育されます。胸腺細胞と同じ遺伝型のものが「自己」であるという教育が、リンパ球に対して徹底的に行なわれます。


そのとき、胸腺上皮細胞とT細胞とが接触して、胸腺細胞と強く反応するT細胞は自分自身を攻撃する「自己反応性T細胞」として、その時点で危険細胞と判定され、細胞死のプログラム「アポトーシス」によって遺伝子は切断され、その細胞は消滅してしまいます。すなわち、自分を攻撃するTリンパ球は全てその場で殺されてしまうのです。このようにして、胸腺で作られたリンパ球の九五%が死滅するといわれています。


結局のところ、僅かに残った「自己」と反応しない細胞だけが生き残って分裂増殖し、胸腺を出てT細胞となります。そして、自分以外の「非自己」とだけ反応する免疫反応に携わります。このようにしてTリンパ球は、外から入ってきた自分以外の細胞だけを攻撃するようになります。免疫系が自分を攻撃しないのはこのような理由からであったのです。これを「中枢性免疫寛容」といいます。自分の細胞は許して攻撃しないと言う意味で「寛容」という言葉を使っています。

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免疫治療専門医 中嶋靖児
中嶋靖児 著

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