自己免疫病は女性に多い
 JUGEMテーマ:がん全般

病気の原因がはっきりとはわからずに、その治療法も確立していない病気のことを難病といいます。その多くは自己免疫病です。


大勢の患者のいる関節リウマチも自己免疫病です。それは全身のいろいろな関節に腫れや痛みを伴う炎症が発生し、病気が進行するとそれらの関節が変形して日常の動作が困難になる病気です。


その原因は、関節の内側を被っている滑膜が自分の免疫細胞によって攻撃されたためです。それは自分の免疫システムが、自分の滑膜を異物と認識して障害したために発生した自己免疫病です。患者は殆どが女性で、しかも二〇代や三〇代の若い人にも発生しています。そして重症の場合には歩行が困難となり、寝たきりになってしまうこともあります。


また、全身性エリテマトーデス(SLE)と呼ばれる自己免疫病もあります。全身のいろいろな細胞や核が自分の免疫細胞によって攻撃される病気で、そのために核の抗体が現われ全身の臓器が同時に障害されます。


若い女性に原因不明の発熱があって、体が次第に衰弱するようなときには、この病気を疑うといいます。全身が障害される病気です。これも若い女性に多い病気です。


また、特定の部分だけが障害される自己免疫病もあります。シェーグレン症候群は涙腺や唾液腺、または胃や膵臓などの外分泌腺だけが攻撃されたために発生した自己免疫病です。そのためにこれらの分泌腺の機能が低下し、唾液が少なくなって口の中が乾燥したり、涙が出なくなって目が乾燥したりします。また、胃液や膵液の分泌が減少して萎縮性胃炎になったり、繰り返し発生する膵炎になったりもします。これもまた女性に多い病気です。


そのほかにも、ベーチェット病や重症筋無力症、または多発性硬化症など自己免疫が原因で発生する病気は数多くあり、これらの一連の病気は一般には膠原病と呼ばれています。いずれの自己免疫病にも確立された治療法はなく、大部分は難病に指定されています。


どうしてこれらの自己免疫病は女性に多いのでしょうか。しかも二〇代や三〇代の若い女性にも多く発生しています。本来であればこれらの若い年代の女性は子供を作る大切な年代であり、病気には無縁な年代であるはずですが、何故か自己免疫病だけはこれらの若い女性に多いのです。


いろいろな記述を調べてみても、そのことに対する納得のいく説明はありません。成書にはただ漠然とホルモンが関与するのではないかと書いてあるだけです。


自己免疫病の原因は、自分と反応する自己反応性T細胞が胸腺で除去されないで残っているためといわれています。ところが通常は、体の中にはこれらの自己反応性T細胞を調節する専門のシステムがあって、その細胞を作動しないようにする末梢性免疫寛容システムが働いているはずです。すなわち、自己免疫病は発生しないような仕組みになっています。それなのに若い女性に自己免疫病が多いのは、この自己反応性T細胞が、これらの若い女性の体の中では何らかの特別の使命を持って活動しているためではないかと思われます。そこで考えられるのが流産です。


流産とは、妊娠二十二週未満に起きる妊娠の中絶のことをいいますが、その多くは胎児の染色体異常に伴う致死因子が原因といわれています。残念ながら、流産はどうしてもある一定の比率で発生しています。


ところが実際の流産はそれだけではないといわれています。通常の月経と思われるものの中にも沢山の流産は含まれていて、母親にも知られないままに、多くの胎児が月経として流産しているというのです。いやむしろ、無事に成長して生まれてくる胎児の方が少ないのではないかという人さえいるくらいです。


人類は種族保存のために、生まれてくる子供の自然淘汰を流産という形で行なっているのではないかと思われます。そして、その流産に自己反応性T細胞が関与しているのではないかと思うのです。すなわち、どうしても避けることの出来ない流産が、この自己反応性T細胞の免疫反応である拒絶反応によって起こっているのではないかと思われるのです。


実際に、習慣性流産は自己免疫病といわれています。その治療法として他人のリンパ球を注射する免疫治療が現実に行なわれています。流産に自己免疫病の原因となる自己反応性T細胞が関与している可能性は十分に考えられます。


若い女性は、子供を産むという大切な仕事を行なうために、自分の体の中に特別な機能を持っていなければなりません。免疫もその例外ではなく、そこには若い女性特有の免疫の仕組みがあるに違いありません。そしてそこでは、自己免疫病の原因となる自己反応性T細胞も重要な使命を持って、働いているものと思われます。


女性の生命は、種族を維持するという大きな使命を果たすために、免疫系の絶妙なバランスの上に成り立っているものと考えられます。すなわち、この年代の若い女性は、人類の種を維持する上で極めて重要な仕事をする実に大切な体であったのです。しかしそれでも、自分の細胞が変化して発生するがん細胞は、なぜかその自己反応性T細胞によっても異物と認識されて攻撃されることはなかったのです。

| 免疫反応の本質 | 14:37 | comments(0) | - | pookmark |
末梢性免疫寛容ががんの増殖を許している
 JUGEMテーマ:がん全般

人類にとって最大の脅威であった伝染病は、ワクチンのおかげで大部分は克服することが出来るようになりました。しかし、人類の最大の死亡原因であるがんは現在でもワクチンで治すことは出来ません。世界中の学者が、がんのワクチンを作るために今でも全精力を注いで研究していますが、いまだにがんのワクチンは成功していないのです。


それどころか、実際の医療の現場では、手術でがんを切除し、殆どのがんは除去できたと思っていても再発はしますし、また十年以上もの長いあいだ再発がみられず、がんは治ってしまったのではないかと思っていても、それでもがんは再発することがあります。がんにおいては伝染病で見られたような獲得免疫は成立していなかったのです。がんは二度無し病ではなかったのです。


今まで、がんのワクチンが成功しなかった理由もここにあります。がん担当のリンパ球はTリンパ球ではありません。そのために伝染病で成功したようなワクチンの出来るような条件は、がんでは満たされていなかったのです。


考えてみますと、いかににっくきがん細胞ではあってもそれは自分の細胞です。あるとき、自分の正常細胞が突然変異でがん細胞に変身したとしても、もともとは自分の体を構成していた自分の細胞です。無限の増殖を開始する遺伝子のスイッチが「ON」に入ってがん細胞になったとしても、大部分の遺伝子は自分と全く同じで、それは自己そのものです。


がん細胞が自己細胞である限り、自分の免疫で攻撃されることはありません。自分の細胞に対しては末梢性免疫寛容のメカニズムが作動して、免疫反応は起こらないような仕組みになっていたのです。


わずかな可能性があるとすれば、それは自分の細胞をも攻撃できる自己反応性T細胞ではないでしょうか。自分の細胞のわずかな変化にも敏感に反応して免疫反応を起こし、いろいろな自己免疫病を発生させています。この細胞は、細胞のわずかな異物化をも感知する能力を持っています。しかし、そのような能力を持つ自己反応性T細胞であっても、自分の体内に発生したがん細胞を攻撃することはありませんでした。ここでも抹消性免疫寛容によってがんは見逃されてしまっていたのです。


元来、T細胞は生物が海から上陸したとき、急激に増加した外来抗原に対処するために進化して生まれてきたリンパ球といわれています。特に、当時の生物の最大の脅威であったウィルスに対処するために、長い時間をかけてNK細胞から進化して生まれてきたリンパ球がT細胞といわれています。


そして生物は、そのウィルスなどの外敵から身を守るために、最終的には獲得免疫という強力な力を手に入れることでその目的を達成しました。その結果、生物は海から上陸することが可能になったのです。


このように、T細胞は外来の抗原に対しては絶大な力を発揮し、そのために生物は陸上での生活が可能になりましたが、それはあくまでもウィルスや細菌といった外から侵入してきた異物に対する攻撃手段であって、基本的には、T細胞は生物の内部の変化を監視する免疫細胞ではなかったのです。


それでも少数の自己反応性T細胞は残されていて、自分の体内に発生してしまった異常な細胞を発見して攻撃する余地は残されていましたが、そのために自己免疫病は発生してしまったとしてもがん細胞が攻撃されることはなかったのです。


それは、T細胞はがんを攻撃の対象にはしていなかったためではないかと思われます。なぜならば、その当時の人類にとって、がんは生命をおびやかす脅威ではなかったからです。そのためにがんに対しては特別に攻撃をする必要はなかったのかもしれません。


もっとも、子供のがんは別としても成人の普通のがんでは、四〇歳以前にがんが原因で死亡することは滅多にありません。四〇歳になる前に体内にがんが発生していたとしても、そのがんが原因で死亡するのは殆どは四〇歳を過ぎてからです。人類が、種族を維持する年代である二〇歳代や三〇歳代は、がんが体内に存在していたとしても、それは自分の生命をおびやかす脅威ではなかったのです。


当時の人類は、種族維持のために大きな支障となる胎児の異常にたいしては敏感に反応して対処するシステムを持っていたとしても、がんに対しては、がんが体内に存在していたとしても特に脅威ではなく、特別に何かをする必要はなかったものと思われます。がんが人類の脅威となったのは、人々が生殖年齢を超えて長生きするようになってからであったのです。


しかも、がん担当のリンパ球は太古の昔からNK細胞であって、Tリンパ球はがんに対しては積極的に反応するような仕組みにはなっていなかったものと思われます。伝染病で見られる獲得免疫の主役であるTリンパ球は、がん担当リンパ球ではなかったのです。

| 免疫反応の本質 | 14:39 | comments(0) | - | pookmark |
愛の献血
 JUGEMテーマ:がん全般

「このたびは、癌や難病の治療で困っている患者さんのために、愛の献血を決意していただきまして誠にありがとうございました。その自発的で暖かいあなたの真心に、心より感謝申しあげます。


献血していただくに当たりましては、つぎに掲げましたような何種類もの血液検査を受けていただき、それらのすべての検査に合格していただかなければなりません。つきましては、ここに、このたび行ないました血液検査の検査結果を、検査原票を添えてご報告させていただきます。


これらの検査が、若き日のあなたのご健康を確認されます上で、お役に立つことが出来ましたら幸いです」


これは、献血に賛同していただき、血液検査を受けていただいた学生さんたちへの検査結果を報告するときに使う報告書の前文です。


実は、リンパ球免疫治療を行なうにあたって、私たちは大勢の学生さんたちに献血をお願いしています。その献血をしていただくにあたっては、血液提供者に前もって何種類もの血液検査を受けてもらわなければなりません。そしてその検査結果を一人一人に別個に報告しています。


検査項目は、貧血の有無を調べる一般血液検査、多項目にわたる肝機能検査、またB型肝炎やC型肝炎などの肝炎ウィルス検査、梅毒検査や成人性T細胞性白血病検査、それにエイズ検査です。これらの検査結果を慎重に検討し、全ての項目で異常のないことが確認出来た学生さんたちに献血をお願いしています。


異常のあった学生さんには直接面談して検査内容を報告します。更に詳しい検査が必要であるか、または治療が必要であるかは、そのときお話するようにしています。今までに大勢の学生さんに検査を受けてもらいましたが、幸いにエイズ患者は一人もいませんでした。


献血者は全員が柔道整復師学校や看護師学校または理学療法士学校などの医療技術専門学校の学生さんたちで、大部分は十八歳から二〇歳までの学生さんです。献血をお願いする学生さんたちには年齢制限を設けていますが、それは二十五歳以下に設定しています。


血液を提供してくださる学生さんの学ぶ医療技術専門学校では、私自身が直接に授業を担当し、免疫学や生理学、または外科学の授業を通して細胞移植などの意味を説明し、その上で献血をお願いしています。


また医療従事者は、職務上、針刺し事故などの医療事故に遭遇する可能性があり、またウィルスや細菌などの病原菌に感染する危険性もあります。そのために、前もって自分の平常時の血液検査の値を知っておくことが必要となります。このようなこともあって、多くの学生さんたちに血液検査を受けることを勧めています。そのとき、血液検査にあわせて献血もお願いしています。このように、この治療は多くの学生さんたちの善意と協力の上に成り立っていたのです。

| 免疫反応の本質 | 14:41 | comments(1) | - | pookmark |
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免疫治療専門医 中嶋靖児
中嶋靖児 著

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